銀の海 金の大地
基本的に、マンガなら10冊中9冊は一度のみ、小説なら100冊中99冊くらいの割合で一度しか読まない私ですが、この作品は特別!
何度読んでも涙なしには読めなくて、そのたびに感動して、とにかく最高なんです!
勿論、書き下ろし小説が掲載されているイラスト集も購入して大切に保管してますよ。
挿絵担当の飯田 晴子さんの絵がまた美麗で素敵なので、仮に書き下ろし小説がなくてもイラスト集は購入していたでしょうけど。
-------第1巻引用------------------------------------------
真秀は湖の国、淡海で育った。そこは息長族の国だが、真秀はその一族ではない。ヤマトの大豪族の首長がどこかの奴婢に生ませた子で、息長の首長の真若王、丹波の首長の美知主とは異母兄妹である。母の御影はここ数年業病で苦しんでいる。その病によく効く熊の血凝をやるから取りにこい、という美知主からの伝言に、真秀は、不思議な霊力を持つ兄の真澄と、丹波へ向かう船に便乗した。
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物語が大きく動き出すのは、主人公の真秀が佐保の王子、佐保彦と出会う2巻からなのですが、たくさんの人物の思惑が絡み合い、愛憎入り乱れな上、いくつものどんでん返しがあり、最後の最後まで怒涛の展開が続きます。
見所はいっぱいあるのですが、やっぱり私は、佐保の王子として、最初は佐保に滅びをもたらすと予言されている真秀&真澄を殺すつもりでいたのに、やがて、最愛の妹、佐保姫にそっくりな容姿でありながら、過酷な環境で育ったために佐保姫とはまったく性格の異なる真秀を愛しいと感じるようになり、心揺れながらも芽生えた恋慕の情を捨てられない佐保彦の苦悩と、逆に佐保の一族によって殺れようとしている立場ながらも、真澄に良く似た容姿の佐保彦を恋しく思うようになった真秀の恋の描写が一番好きです。
真秀が何より大切に思う兄の真澄もまた、真秀のことを愛しているもんだから、余計に複雑なんですけど、そこがまた面白いんですよ。
次の見所は、やっぱり主人公である真秀の生き様かな。
神の愛児として生まれたが故に、大人になっても幼い子供のような心の持ち主で、長年病を患っている母・御影と、やっぱり神の愛児である兄・真澄を守るために、幼い頃から一瞬だって気を抜かず、毎日を精一杯生きてきた真秀が、運命のいたずらにより佐保彦と出会うことで、更に過酷な状況に追い込まれるのですが、身も心もぼろぼろにされても、懸命に運命に立ち向かう姿には泣かされます。
ってか真剣に、この子が幸せにならないのは嘘だって思う。
ホント、この子、辛い目に合い過ぎ!
めちゃくちゃ家族思いの健気な良い子なのに、しょっちゅう口汚い言葉で罵られたり、何度も殺されそうになったり、可哀想で見てられないと思いながらも、いつか真秀にも幸せが……と希望を胸に読み進まずにはいられないんですよね。
で、その次が、第二の主人公とも呼べる佐保彦の苦悩かな。
銀金って結局のところ苦悩キャラだらけなんですけど、根が真面目なだけに自分ひとりで思いつめちゃうタイプの佐保彦は、ほっとけないっつーか、愛しいっつーか。
今気が付いたんですけど、佐保彦って、アスラン(種)に似ています。ってか、ヘタレ具合がまんまアスランだ!
立場に縛られつつも、情に脆いところとか、口下手で不器用で融通がきかないとことか、色恋沙汰が苦手なとことか、強がりなくせして本当は甘えん坊なとことかそっくり!
しがらみが多い上、真秀ほど思い切りもよくない分、不幸な運命と孤独に闘わなければならない彼の幸せを願うばかりです。
幸せを掴むどころか、この先、一番不幸な展開が待ち受けてそうなのが彼なんですけど。
「真秀の章」の続編は「佐保彦の章」らしいので、余計に続きが待ち遠しくて仕方ないのですが、氷室さん、まだ続きを書く気持ちは残ってるのかな?
勿論私はいつまでだって待つ気はありますけど、流石に10年……。
あんまり期待は持てませんが、「真秀の章」だけでも十分過ぎるほど面白いし、物語の続きをいろいろ想像するのも楽しいですので、気長に付き合っていこうと思います。

古代転生ファンタジー 銀の海 金の大地 イラスト集 氷室 冴子 (著), 飯田 晴子 (著)

銀の海 金の大地 氷室 冴子 (著)